何の意味も成さなかったドクター・カドリとの電話を切り、あまりの意思の疎通のなさに
「どうせアタシは押しが弱いよ…整体の先生にだって『小心者ですね』って言われた公式小心者(?)なんだから…」
とぶつぶつ一人で落ち込むアオを
「ううん、カドリは公式最強獣医(←アザラシーズ認定。無意味。)だからしょうがないよ…」
と、よくわからない理由をつけてなぐさめるアカ。
どちらにしてもサラ嬢に続き、なんだか非常に理不尽な敗北感に襲われる、とっても不憫(だと自分達は思っている)な飼い主たち。
いや!しかしやはりここであきらめてはいけません。
ゲンマ王子とハヤテ姫のため、たとえどんなに高い壁だろうとも登ってみせるのが『小間使い』としての務め。 とりあえずは送られてきたという書類を取りに、動物病院まで行ってみることにしましょう。
次の日「受付がサラ嬢ではありませんように…」と心底願いつつ、病院へ向かったアザラシーズ。
ああ、しかし天は無常にもアザラシーズを見放したのです。 レジのコンピューターの前でいつもの凶暴なオーラをゴウゴウと放っているのはやはり「ゴッドナース」その人ではありませんか…(T□T)
くうう…けれどここで逃げ帰っても準備が遅れるばかり。 ここは怖くってもお伺いをたてるしかありません。
「あの…昨日電話した者ですけど…血液検査の書類を取りに来ました…(←もう半泣き)」
「血液検査の結果ぁ? ああ、カンザスがどうとかってやつね。 はいはい。 これよ。 確認して。」
思いのほかあっさりと手渡され、ほっとしながらも拍子抜けする飼い主二人。
よ…よかった…よし、書類確認して帰ろう…
さてと…あれ? …こ…これ本当に公式文書…? どう見ても「とりあえずファックスしたぜ」って感じのレポートなんですけど…ええと…『カンザス大学で検査』って記述は…うわっ!ちっちゃい!こんなとこにぽっちり書いてあるだけだよ!
カドリ先生の言ってたこと本当だったのか…(←やっぱり信用してない)えっと、後は検査員のサイン…サイン…サイ……ない……
……こ…これって……もしかして…
ズバリ使えないでしょう。
血の気が引いたのは、その書類が使えないとわかったからなのか、それとも背後で
『で、どうなのよ。それでいいんでしょ?確認済んだらそれ持ってとっとと帰れば?』
とばかりにこちらを見つめているサラ嬢に、
『いや、これじゃダメなんです』
と言わなくてはならないという、(アザラシーズにとっては)自殺行為に等しい事態に直面したからなのか。
「あ…あのですね…これじゃ検疫で認めてもらえないんで…す」
「は?(# ̄□ ̄)」
「(どひー!ヤられるー!)え…えと…ファックスとかコピーじゃなくて、カンザス大学自体が発行した公式文書じゃないとダメでして、それには研究所の住所とか、検査員のサインとかがちゃんと入ってるはず…なんですけ…ど…」
「なにそれ?ウチで受け取ったのはこれだけよ。(# ̄□ ̄)」
「いえ…ですから、こちらにそういう内容の公式文書がカンザスから届いてないといけない…んで…す…」
「だ・か・ら。 ウチで受け取ったのはこれだって言ってるでしょ。(## ̄□ ̄)」
「で…でもですね、カンザス大学の方が、採血した病院に文書を送ると言っておりまして…」
「なによ?大学側がそんなこと言ってんの?!」
「(い…いや、電話して直接聞いたわけじゃないけど)…はい!そうなんです!!」
この時の気分を、どう形容したらいいものだろう?
『ヘビににらまれたカエル』というか、『部下の修復不可能な不祥事を社長に報告しなくてはならない係長(←よくわからん。)』というか。
しゅるしゅると自分の身体が2cmほどに縮んでいく音が聞こえそうな中、サラ嬢の気の弱い人なら瞬殺できそうな『眼光ビーム』を少しでも避けようと空を見ながら話を続けるアザラシーズ。
「…というわけでして、これじゃダメなんです!(←言っちゃったよ!この人たち!)」
「ふーん、あっそ。じゃ(この)あたしが直接電話して聞いてあげるわ。…ったく、どういうつもりよ…そんな書類きてないっつーの…(#`△´)」
怒りオーラ全開で受話器を取るサラ嬢。
そう、忘れてはいけません。 サラ様は非常に仕事ができるお方なのです。
怒りの矛先が自分達からずれたことにほっとしつつも、これからサラ嬢からの電話に応対するであろう研究所の職員に思わず同情しつつ、「ゴッドナース」の仕事っぷりを眺めるアザラシーズ。
どうやらカンザス大学へ血液を送った大元の総合研究所に電話をしているようです。
「・・・っていうわけで、ウチのクライアントが必要なのはそういう『公式文書』なのよ。 おたくが送ってきたの、これ使いものにならないわけ。」
す…すげえ…大会社相手に本気で文句言ってる…
「はあ?! 知らないですって?! カンザス大学側は『公式文書を送る』って言ってんのよ! ウチにはそんなもんきてないんだから、血液送ったおたくに届いてるはずでしょ?! ちゃんと調べなさいよ! (クワッ!(#゜□゜) 」
どひー!!か…かわいそうな研究所職員…この時間に働いてたばっかりに…
「…どう? ほら、やっぱりそういうことでしょ? で、どうするの? ウチのクライアント、あたしの目の前で待ってるわけよ。(←ひどく迷惑そうにアザラシーズを見やるサラ嬢…ガクガクブルブル( ̄□ ̄;))
…間違いないのね? あっそ。じゃそう伝えるから。(ブチ。)」
ぐるん!とおもむろにこちらに顔を向けるゴッドナース。
(どひどひー!(T□T))ど…どうなったんですか…?
「公式文書、くるわよ。(きっぱり。)」
か…かっこいい…!!さすが神!!
「おたく達が言ってた通りだったわ。 そういう公式文書があるんですって。
で、それは別送ってワケ。 ウチに届いたら連絡するから。 それでダメっていうのなら、こっちはもう知ったこっちゃないわ。
日本政府を恨むのね。 …ったく、なんで(このあたしに)こんな面倒なことさせんのかしら…」
『本当ですよねえ』と、やはり空を見ながら返事をするアザラシーズ。
『今、目を合わせたらヤられる』。
動物としての本能が、全力でそう告げています。 そそくさと「それではワタクシたちはこれにて…」と逃げるようにその場を後にする二人組。
背後にサラ嬢の視線が痛いほど突き刺さってくるのを感じながら、車へ早足で向かったのでした。
その夜。少し遅く帰ったアザラシーズに届いた、病院からの一本の電話。
「あ、○○病院のサラよ。(←(@□@:)!な…なんでしょう?!)
あれからなんかちょっと気になったから、おたく達のために(このあたしが特別に)病院にきてる書類、見直してあげたのよね。
そしたら書類の束のいっちばん底の方に、例の公式文書、埋もれてたわ。 獣医(←もちろんカドリ・・・)がチェックしてなかったみたいよ。 じゃ、そういうことだから取りに来て。 (ブチ。)」
…じゃあ、今回アタシ達があのサラ嬢の手をわずらわせて、心臓止まるような「生命の危機」(…)を何度も味わったのって…
やっぱりお前か?!
カドリーーーーー!!!!!(@□@;)
…それにしてもなんなのだろう?
どうしてアタシ達はこんなにもサラ嬢に頭が上がらないのだろう?
確かにサラ嬢はぶっちゃけコワイ。 けれどそれは、あの病院に通ってきた1年半という間に培ったものだけではないような気がする。
思えば『この人ヤバイ』と感じてたのは、ああいうキャラだと理解する前。 最初出会った時からだ。
なんだろう? 見かけ? まさか。
だってサラ嬢は色白でブロンドでグリーン・アイですごくキュートだし…
その時。
『ちょっと、アンタ達。いつまでぼーっとつっ立ってんのよ!帰ってきたならぼやぼやしてないでアタシをかまいなさいよ!役立たず!』
アザラシーズの視界に入る、ご立腹のハヤテ姫の顔。 その真っ白の毛皮。 大きなグリーンの瞳。
…………ああ、そうか… こりゃ逆らえないはずだよ……
だってサラ様、我が家の暴君ハヤテ姫そっくり…っ _| ̄|○|||
そのまた次の日、カンザス大学からのものに間違いない「公式文書」↓を手に入れ、うれしいはずなのに、今までの経緯を考えるとやっぱりなんだか自分が『敗者』のような気がしてならない、ビミョーな心持ちのアザラシーズなのでした。

や・り・ま・し・た…!(感涙)
完。
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山猫兄弟
アザラシーズ(アカ&アオ)












